▪破れ・擦れ・虫食い穴・焦げ穴・引っ掛けた傷を綺麗に修復したい場合には、まずは「かけはぎ」をご検討ください。
▪修理料金は決して安くありませんが、多くの場合は修理したことが視認できない程に綺麗に修復することができます。
▪スーツ・コートなどの人目に付く箇所の修復に、自信をもっておすすめします。

かけはぎの解説

かけはぎとは

かけはぎは、衣服の引っ掛け傷・破れ・虫くい・焦げ穴などを最大限に修復する技術です。

  • 破れ箇所の周囲の繊維と融合させながら、一本一本の糸を丁寧に織り込むことで限りなく元の状態に近づけて修復する修繕技術です。すべての工程を職人の手作業で行う為、大変高度な技術が求められます。
  • 「かけはぎ」は関東での名称です。「かけつぎ」は関西での名称です。2つは同一の技術を表します。
  • 素材・状態に応じて、織り込み式(共糸を使用した修理方法)と差し込み式(共布を使用した修理方法)の2つの方法で対応します。

素材の特徴に応じて「織り込み式」と「差し込み式」の2つのかけはぎ技術で対応します。

  • 織り込み式は、共布を使用せずに、共糸(同じ糸)を使用します。縦糸と横糸を1本ずつ入れて生地の綾を復元します。ニットの穴、起毛したウール・カシミヤの虫食い、ネクタイの糸引けなどはこの方法で対応します。共糸は視認できない箇所より数本確保します。共糸をお客様がご用意する必要はありません。
  • 差し込み式は、破れ箇所を共布(同じ生地の残布)で覆い、元生地と共布の四辺をはめ込むことで修復する方法です。共布をお持ちでしたらご用意下さい。紛失された場合でもズボンの裾やポケットの中などから調達しますので対応することが出来ます。

共布(残布)も一緒にお預け下さい。

「共布」とは、品物と一致する余り布です。

  • 共布とは、品物と同じ残布(余り布)です。購入時に予備の布として付いてくる場合もありますし、裾上げした際の残布として返却される場合があります。共布を使用してかけはぎを行います。品物と一緒にお預け下さい。
  • 共布を保持されていない場合でも対応可能です。ズボンの裾、ポケットの中など表側からは視認できない箇所より確保します。
  • 共布をお持ちでないスーツジャケットを依頼する場合は、ズボンも一緒にお預け下さい。上着は共布を取る場所が限られていますので、ズボンより調達します。共布がないコートも、ほとんどの場合が対応可能です。まずはお気軽にご相談下さいませ。
  • 共布は、品物のポケットの中に入れてお預け下さい。

共布がなくても対応可能です。

  • 共布をお持ちでない場合でも、表側から視認できない箇所より共布を確保し使用しますのでご安心下さい。
  • ジャケットよりズボンの方が共布を確保しやすい為、ズボンも一緒にお預け下さい。視認できない箇所より共布を取ります。
  • 【共布を取る①】ズボンの裾の折り返しの内側から共布を取ります。着用時に視認できない場所です。取り除いた箇所は、まつり縫いで始末します。

  • 【共布を取る②】ダブルの裾は共布を十分に確保することが出来ない場合があります。その場合、ダブルをシングルに変更する場合があります。

  • 【共布を取る③】後ろのポケットの中から共布を取ります。着用時に視認できない場所です。ポケットは使用することが出来ます。

  • 【共布を取る④】脇(前)のポケットから共布を取ります。着用時に視認できない場所です。ポケットは使用することが出来ます。

  • 【共布を取る⑤】ジャケット(コート)のポケットの中から共布を取ります。着用時に視認できない場所です。ポケットは使用することが出来ます。

  • 【共布を取る⑥】ジャケットの見返し(画像の四角い印)より共布を取ります。角度によっては、着用時に見えてしまう場合があります。共布を取り出した箇所には別布を当てがいます。

かけはぎの仕上がりレベル3段階

【レベル1】近くで見ないと痕跡を視認できない

①ウール混(よくある一般的なスーツなど)

  • 依頼品の8割を占めます。綺麗に仕上がることが多いのでお勧めです。ストライプやチェック柄、千鳥柄であっても多くの場合、痕跡が目視しにくい状態で仕上がります。

②ツイード

  • 糸を一本一本織り込んでいきます。共布を確保できなくても、共糸で対応可能です。非常に綺麗に仕上がります。

③ウールの虫なめ(虫食い)

  • 依頼数の多いコートの虫なめは、非常に綺麗に仕上がることが多いです。穴が貫通している状態でも修復可能です。

④バーズアイ柄

  • 綺麗に仕上がることが多いです。

⑤ニット

  • ほつれ全般→傷が大きくても、切れている糸の本数が少なければ、綺麗に仕上がります。本数が多いと目立ちます。
  • 糸引き→糸が引けているところを元に戻していきます。綺麗に仕上がることが多いです。
  • リンキングのほつれ→衿の修理依頼が非常に多いです。綺麗に仕上がることが多いのでお勧めです。

⑥レース

  • レースの状態にも拠りますが、綺麗に仕上がることが多いです。共糸や似た糸を使用し対応します。

【レベル2】近くで見ると痕跡が視認できる

①黒の綾織(斜めに軽微な凹凸がある生地)

  • キズ周辺に薄く四角い線が残ります。穴が小さい(3mm以下)場合は、共糸で織り込むことが出来るので四角い線は残りません。軽微な段階での修理を推奨しています。

②Tシャツ

  • 傷が小さい場合は、それほど目立つことなく仕上げることが出来ます。傷が大きく共糸ではなく、共布を使用する場合や、生地の色彩が薄い場合・厚みがなく薄いケースは、痕跡が目立ちやすいです。

③リブニット

  • ジャンパーの裾や袖によく使用されており、糸が切れている本数が多いと非常に目立ちますので、その場合は、リブニットを交換する修理を推奨しています。

④ネクタイの糸引き

  • 「飛び出た糸」「引け」を戻すことが出来ます。目視する角度によって多少の跡が残ります。

【レベル3】四角い線がはっきりと残る

①光沢がある生地

  • 光沢がある素材のかけはぎは目立つケースが多いです。

②色褪せがある生地

  • 摩擦・日焼けにより、修理箇所付近が色褪せて劣化している場合、色褪せのない共布との色違いが生じ、かなり目立つことがあります。ジャケット肘・スラックス膝、尻部など摩擦により色褪せしている場合が該当します。

③厚みがない薄い生地・色が白で無地のYシャツ

  • ワイシャツの中でも白の無地は目立ちます。ストライプや色が入ったシャツの方が目立ちません。

④ポリエステル100%・アセテート・コーヂュロイ

  • 特殊素材は、キズを囲うように四角い線が残ることが多いです。特にポリエステル約100%は特に目立ちます。対応できない場合もありますので、実物にて可否判断をさせて頂きます。

⑤綿(バーバリーコート、カナダグースダウンなど)

  • バーバリーのトレンチコートは、多くのご注文を頂いておりますが、キズを囲うように線が残ります。特に、縦糸と横糸の色が違う素材の場合は、はっきりと痕跡が残ります。予めご承知下さい。

⑥ドスキン生地(礼服)

  • 往年の礼服で多く使用されている生地です。目立ちやすい生地ですが、非常に依頼が多いです。

かけはぎvsミシン刺し 選ぶべきは?

高い復元力の『かけはぎ』vs リーズナブルでも侮れない『ミシン刺し』を目的に応じて選択。

「勝負服を品質重視で直したい」「普段使いをなるべく安く直したい」「目立たない場所にある穴なので完璧な修復より価格重視で」など、品物の用途により、求める修復水準・かけるべき費用が異なるはずです。目的に応じた修理方法をお選び下さい。

『かけはぎ』と『ミシン刺し』の比較一覧

かけはぎ ミシン刺し
修理目的 最大限に修復 価格を抑えて修復
修復度合い ミシン刺しに勝る かけはぎに劣る
最低価格 ¥6,600(税込) ¥2,200(税込)
適応シーン ①「勝負服」を綺麗に修復したい
②目立つ場所の傷を最大限に修復
①「普段使い」を価格重視で補修
②人目に付かない箇所の傷を補修
NGシーン ①負荷がかかる所を修復する場合
②広範囲に摩耗・劣化している布
①修理の痕跡を許容できない場合
②生地の柄も綺麗に復元したい時

注文方法を見る

かけはぎの料金

基本料金

料金は傷の寸法・素材・場所に応じて算出します。写真(画像)をメール・ラインで送り概算の修理金額を知ることが出来ます。正式には現物を確認しご案内します。

  • 直径5mm:¥6,000程度

  • 直径10mm:¥8,000程度

  • 直径15mm:¥10,000程度

  • 直径20mm:¥12,000程度

 ▪穴サイズは直径を表示しています。金額は税別表示です。
▪穴の周りも生地が薄くなり劣化している場合は、劣化している箇所も含めてかけはぎを行わざるを得ない場合があります。

プラス料金

素材・穴の位置、穴の状態、共布の始末、修理箇所を解体する場合などプラス料金が発生することがあります。見積をご案内する際に事前にお知らせしますのでご注文をご検討下さい。修理完了後に割増料金が発生することはありませんのでご安心下さい。

特殊な素材
礼服 基本料金の1.2倍
Yシャツ・Tシャツ・トレーナー・ニット 基本料金の1.2倍
コーデュロイ 基本料金の1.2倍
トレンチコート・チノパン(綿素材) 基本料金の1.2倍
着物(和服) 基本料金の1.5倍
ダウンコート(綿・ポリエステル・ウール) 基本料金の2倍
ブラウス・スカジャン(シルク素材) 基本料金の3倍
場所・状態
ボタンホールをふさぐ +¥3,300(税込)
ズボンの後ろポケット口 +¥4,400(税込)
ジャケットのポケット口 +¥4,400(税込)
既存のかけはぎに重ねる 基本料金の2倍
一枚仕立て(片面) 基本料金の1.2倍
一枚仕立て(両面) 片面料金の2倍
マフラー 一枚仕立てと同じ
他店のやり直し 基本料金の2倍
共布を取る・取った後の始末
ズボンの裾から共布をとる +¥1,100(税込)
ダブルの裾をシングルに変更し共布を取る +¥2,750(税込)
ジャケット(コート)から共布をとる +¥2,200(税込)
ダウンコートから共布とる +¥3,300(税込)~
手間がかかる解体作業を伴う
上着の袖をほどく場合 +¥2,200(税込)
上着の衿をほどく場合 +¥2,200(税込)
ズボンの前立てをほどく場合 +¥1,650(税込)

注文方法を見る